寺報『徳風』第15号 聞法道場

幸せってなんだ

幸福になりたいと思う心が時には人を傷つけ、幸福でありたいと思う心が不幸を招く。では一体、幸福とは何かと問うてみる。
▼健康=幸福、病気=不幸とは誰が決めたのだろうか。健康と長生きだけが人生の目的ならば、人生の最後に迎えるのは「死」である。もし「死」がそのように不幸というなら、誰もが人生の最後には不幸になって終わらなければならない。これは大問題である。もしそうだとしたら、何のために生きるのか、生きる事にどんな意味を見出だせるのだろうか。それではあまりに空虚ではないだろうか。
▼阿弥陀如来の建立した仏国土は報土(ほうど)とも云われ、虚しさを超えた世界である。本当の意味で生きるということが報われる心境をいう。人は皆、そんな世界に往きたいと念(おも)っている。だから真実世界ともいう。真実とは、いつのどこの誰もがそうだとうなずき、今ここにいる私がそうだとうなずくことである。
▼「生病老死」は不可避である。どうもならん事を何とかしようとして苦しむ。どうにもならない現実を抱えながら「浄土という心境」に生きる。
▼念仏する心の中に浄土世界は住む。そのような世界が実際にどこかにあるのではない。であるから、まさに念仏して生きていけることがすでに幸福なのである。
       (釈 大攝)

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